おっさんの寝言、小言、独り言

焼酎好きおっさんの「娑婆」論考。

心にしみる酒

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「旅」といえば、中年以上の人々が思い出すもののひとつは「寅さん」であろう。

寅さんが引き越す旅での珍道中と恋する姿、笑いながらも、時にしみじみとさせてくれる映画だ。

先日「男はつらいよ」を久しぶりに見た。そういえばニュースで寅さんの新作(?)が作られるとのことなのだが、昔の画像でもつなぎ合わせるのだろうか?

それとも誰かが子供時代の寅さんを演じ、新しい寅さん誕生となるのだろうか?

さて、寅さんとまではいかないが、秋空に誘われてフラッと旅に出た。

鈍行列車ではなく、特急列車の窓からなのだが、あちこちで稲刈りの真っ最中であった。

 

そんなわけで久々におっさんが暮らす地方の一都市から、その1.5倍(?)程の大きさのとある地方都市にやって来たのだが、随分と大きなビルやらホテルが立ち並んでいた。

しばらく街を歩いてみると今度はやたらと大きな病院が目立つ。

そして少し行けば老人施設がある。

高齢者社会だけにどこもかしこも医療・介護だらけだ…。

そのまま歩き続けると今度は同じ医療系でも精神科の大きな病院が…。

今の社会年寄りばかりではない、精神を病んだ人が都市の大きさに比例、もしくは放物線を描くかのように増えているのだ。

都会のビル群の中にいるとどこか精神が蝕まれてしまいそうだ。

 

さて電車に乗って小さな町へ行こうと再び駅に戻ったのだが、ホームで電車が来るのを待っている間、そして電車に乗っている間、周りの老若男女そのほとんどがスマホをいじっている。

若者に至っては90%以上がそうだといっても過言ではない。

一体何を見ているのだろうかとのぞいてみたのだが、おばさんは何やら記事を読み、若者はSNS系のものを…。

どちらもよく分からない。

ただひとつスゲ~ッて感動したのが、スマホの速さだ。おっさんのスマホは4年経過するので、動きが超悪い。

最近では「表示できませんでした」なんてよく出てくる。

それに比べみんな指の動きに合わせて次々と画面が変わっていく。

世の中の進化とはいったいどうなっているのだ?

田舎の地方都市に暮らすおっさんは浦島太郎級だ。

 

そこでおっさんはスマホに対抗するかの如く取り出したのが、単行本。

しかもお店の人にカバーをつけてもらったもの。

普段はカバーなどつけてもらうことなどないのだが、この旅のために付けてもらった。

そしてその本の中身は「空海曼荼羅」。

どうじゃ~!!!と思うのだが、誰も反応してくれない…。

インテリのふりをしてはみたものの、ドンキで買ったシャツにユニクロのズボンではそうもいかないか…。

男は服装ではないのだが、やはり見た目は大切。

人は最初の15分ほどで、その人に対するイメージを固定するといわれるし…。

 

そんなわけで電車を降り、小さな町をぶらぶらと歩き、お店の中に入っては、陶器のぐい飲みを見て回った。

今回の目的は手作りのぐい飲みを購入することだ。

これまでどこかの工場で大量生産されたぐい飲みを使っていたのだが、陶器で手作りされたものがどうしても欲しくなり、このまちへやって来たのだ。

何件も見て回り一番気に入ったものを購入した。

これで明日からの酒がより一層うまくなる!

ご機嫌麗しき中再び電車に乗り、都市へと戻った。

 

電車を降り、時間を見てみると18時前。

少し早いがどこかで晩飯を食べようと再び街の中を歩きだした。

金曜日ということもあり、仕事帰りの人々や学生たちで夜の街は賑わい始めている。

種々多様なお店が立ち並んでいるが若者グループの多い店には行きたいと思わない。

できればこじんまりした所がいい。

ついでに肉はほとんど食べないので海鮮ものの店に入りたい。

どこかよさそうなところがないものかと20分ほど歩いていると「浜焼き」と書かれたお店を発見。

外から中を見るとテーブル席もあるがそこにはそれほど人もいない。

カウンターにはおひとり様のサラリーマンが2名ほどいる。

ここにしよう!と店に入った。

そして案内された席がちょうどおひとり様2名の間だった。

 

まずは生下さいと注文し、しばらくしたら両隣のおひとり様とも話すこともあるかなと思っていたのだが、この二人ずっとスマホをいじっている。

おまけに2人ともタバコを吸っている。左手でスマホをいじりつつ、右手で箸を持って食べたり、グラスを口元へ運び、そして今度はタバコを吸ったりが繰り返される。

その間視点はずっとスマホだ…。

それ以外見る気配もない。

 

仕方がないのでおっさんも一瞬スマホを手にしたが、特に見るべきこともない。

黙って調理場の人たちを見つつ黙々と食べた。

店の大将が話しかけてくれるかと思ってもみたが、若者が取り仕切る店で、おっさんの目の前で調理人、ウエイトレスみんながおやつの先取りじゃんけんを始めるという始末。

一体どうなんているのだ???

おっさんはなんだか情けなくもあり、寂しくも虚しくもあり、この先社会はどうなっていくものかと考えてしまった。

ビール一杯、焼酎一杯飲んでその店を出た。

 

都会はこうして孤独が進行していくのだな~。

そりゃ精神も病むわな~。

地方の一都市がこんな具合ならば、東京などは一体どうなっているのだろうか。

宿にチェックインし、スマホを取り出し見ていると、「深夜食堂」という映画が表示された。

新宿で夜0時から朝まで営業するお店を舞台にした人情ものの映画だった。

なんだかいつもよりも余計に心に沁みた。

旅が終われば今日買ったぐい飲みで焼酎を飲みながらまた「寅さん」でも見よう。